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ひきこもり支援について~ご本人、ご家族に寄り添いながら~

ひきこもり支援について~ご本人、ご家族に寄り添いながら~

今回は、加賀市で不登校※1やニート※2、ひきこもり※3の子どもを持つご家族やご本人を支援されている「いまここ親の会」の代表林昌則氏に活動内容や活動をする中での想いをインタビューさせていただきました。

〇活動内容について

「いまここ親の会」は幅広い活動を行われていますが、今回は下記の活動について教えていただきました。
<個別相談>
不登校やニート、ひきこもりで生きづらさを抱えるご本人やご家族を対象に相談を受けています。事務所で会ってお話を聞くだけでなく、電話でお話を伺うことや訪問することもあります。相談者の半数は加賀市在住の方ですが、残り半数は市外の方で小松市や能美市の方が多いです。相談者の続柄は、ご家族が7割、ご本人が2割、残り1割は知人など身近な方からです。ホームページや『よりそうなかま~生きづらさを抱えるみなさんへ~』の冊子※4を通じて連絡が入ったり、市役所から紹介されて繋がるなど経路はさまざまです。初回相談の際に、ご本人も連れて相談に行かないといけないと思われるご家族も多いのですが、それはなかなか難しいので、ご家族だけの相談も受けています。

<親の会>
月に1回、不登校やニート、ひきこもりの子どもを持つご家族が集まり、交流会を行っています。参加者は平均10人前後です。不登校の子どもがいるご家族から成人の引きこもり状態の子どもがいるご家族まで年代はバラバラです。小松市在住の方の参加が多くなっており、親の会小松支部も立ち上げました。参加者が自分の気持ちを吐き出すことや、同じように悩まれている方がいることを知り、悩んでいるのは自分だけではないと感じられる場所になっています。

<みんなの居場所「やんわりと」>
社会につながるきっかけ作りやひきこもりで悩む方同士の交流などを目的に安心して過ごせる居場所を提供しています。部屋にあるパソコンやゲームを使って過ごす人、何もされずただのんびり過ごされる人がいます。現在、この活動は休止中ですが、2024年春には再開を予定しています。

<就労支援(ソルトバンク)>
働きたいけれどもどうしたらよいのか分からない、社会や人とのかかわりに不安があって働けないなど様々な事情から仕事に就けない方の就労に向けてのお手伝いをしています。現在は週1回、9時~12時頃まで、塩の選別やパッキング作業といった内職作業や農作業を行っています。参加者は、平均3~4人です。海外から取り寄せた塩の中には小さなごみが混じっているため、それを手作業で取り除きパッキングをしています。また農作業では、無農薬の野菜を育てています。参加者には、作業費をお渡ししています。

<便利屋オッケー>
便利屋オッケーは、ニート引越しセンターとして引越し作業、部屋の掃除や片付け、草刈りなど様々な依頼を受けています。依頼を受けて活動するため、活動日は不定期です。また、仕事内容に合わせて参加者が決まります。一番多い依頼は、家の片付けのお手伝いです。参加者には作業費をお渡ししています。

<シェアハウス「しぇあはうす百笑」>
 働きたいのに働くことができない方ややりたいことがみつからない方、違う環境で再スタートしてみたいなどの気持ちを持った方など40歳未満の若者が集まり、集団生活を送っています。各自個室の部屋はありますが、お風呂や台所などは共同です。週1回は入居者みんなで食事を作り食べる時間を設けています。共同生活になるため、入居を希望される方には体験をして頂き、現在入居者している人との相性なども確認しながら、入居の決定を行っています。

<星槎国際高校通信制サポート校M高等学校>
星槎国際高校の通信制サポート校として高卒資格が得られるように支援しています。選択科目もあり、大学進学や資格取得を目指す「進学コース」、アルバイトや便利屋の仕事を行う「就職コース」、スポーツや職人などを目指す「職人コース」、武道やプロの格闘技選手を目指す「格闘コース」、学校に行くことが難しい人のために自宅まで教えに来てくれる「家庭教室コース」があります(高校卒業のみを目指す方はコースの選択はしなくてもよいです)。卒業後の進路については、入学された方の希望に向けて、星槎国際高校と連携しながら一緒に考えていきます。これまでに看護の専門学校に進学された方や就職された方がいます。

〇林さんが活動していて感じること、大切にしていること

ご本人に対しては、これまでいじめや孤立などの経験があり、人との交流に苦手意識を持たれる方が多いので、自身のペースで様々な活動に参加することで、自分に自信をつけていってほしいと思いながらかかわっています。就労体験やシェアハウスでの生活を通じて生活のリズムを整えることや、人とかかわることに慣れることも必要だと思います。親元から離れて暮らす経験や働いた対価として作業費がもらえた経験から、少しずつ自信を取り戻す方が多いように感じています。
星槎国際高校通信制サポート校M高等学校は、5年程前からはじめた活動です。不登校からそのままひきこもり状態になってしまう方が多く、若いうちに高校を卒業して社会に出ることが大事だと考え、そのサポートをしたいと思ったことが活動のきっかけでした。入学金や授業料も他の通信制高校より安く設定し、経済的に苦しくても高校に通えるように工夫しています。
活動をはじめた当初は「問題解決型の支援」を目指し、「どうしたいですか?」という質問ばかりをご本人やご家族に向けて投げかけていました。しかし、ひきこもり状態の解決には長い時間がかかり、なかなか進んでいかないことも多いです。長く活動していますが、ご家族の方とは話をしていてもひきこもっているご本人とは会うことができていないケースもたくさんあります。そのため今は、お話を聴いていて寄り添う「伴走型の支援」を意識しています。相談されるご家族の中には行政にたらいまわしにされたという経験がある方や話をする場所がなく一人で抱え込んでおられる方もいました。微力ではあると思いますが、力になりたいと思っています。
 私自身だんだんと年をとってきたので、今後のことを考え後継者の育成をしていかなければと思っています。今は便利屋オッケーの仕事が忙しいですが、就労支援(ソルトバンク)のスタッフを増やし、私は農作業を頑張りたいと思っています。今もひきこもり経験のあるスタッフが送迎などそれぞれの得意分野で手伝ってくれています。彼らの方がよりご本人を理解できるだろうと思っています。

〇ご家族の方へのメッセージ

「周りの人に頼ること」「周りの人とつながること」が大切だと思います。日本人は迷惑をかけてはいけないと思い、悩みをなかなか周りの人に相談できない方が多いです。しかし、一人ですべての問題を解決することは難しいです。周りの人とつながりを持ちながら、解決を目指すことが大切だと思います。また、ご家族の人生とご本人の人生は別ものです。ご本人のことばかり考えるのではなく、自分はどうしたいか、ご家族自身の人生を考えることも大切だと感じます。ご家族には自分自身のことも大切にしてほしいと思っています。

〇いまここ親の会のホームページ

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※1不登校とは、「長期欠席者(年間30日以上の欠席者)うち『何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にある者』ただし、病気や経済的な理由による者を除いた者をいう。」と定義されています。文部科学省の「学校基本調査」より引用。
※2ニートとは、「15~34歳の非労働力(仕事をしていない、また失業者として求職活動をしていない者)のうち、主に通学でも、主に家事でもない独身者」と定義されています。厚生労働省「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究報告書」より引用。
※3ひきこもりとは、「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)」と定義されています。厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」より引用。
※4石川県内の不登校・ひきこもり、精神障がい、発達障がい、セクシュアルマイノリティなどの生きづらさを抱えている方々に寄り添う民間の支援団体(親の会、居場所活動、学習会、フリースクールなど)をまとめて掲載した冊子。金沢市元町福祉健康センター、金沢市泉野福祉健康センター、金沢市駅西福祉健康センター発行。

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