「息子の自立を願う父の想い」
「息子の自立を願う父の想い」
今回は、グループホームで生活する息子を持つ父親のAさんに病気を発症した時の気持ちや今の生活についてインタビューしました。
Aさん(父親 70代) 息子さん(50代)
※グループホーム(共同生活援助事業)とは
障害福祉サービスのひとつです。障がいのある方が、自立した日常生活を営む上で相談や食事・入浴等の介護など、日常生活に必要な支援を受けることができる共同住宅です。
息子が発病して
元々息子は、対人関係が苦手で、仕事に就いても長続きはしていませんでした。仕事を辞めても、しばらくすると次の仕事を見つけて働いていたので、それほど心配せず暮らしていました。息子が20代の時、妄想や幻聴が出てきて心配して病院に連れて行きました。最初は近くの病院に通院しており、その時に「適応障害」とか、「発達障害もある」とか、「統合失調症」と言われていました。症状がひどくなり、入院ができる病院に転院しました。
受け入れがたかった息子の病気
最初は「まさか」と思っていました。なかなか受け入れられず、なんとか病気を治したいと思っていました。病気は治ると思っていたので、自分が定年までに病気が治り、息子に自立してほしいと思っていました。息子から幻聴や妄想の話をされても、理解が難しかったです。仕事もせず家で過ごす息子は、怠けているように見えていました。発症した当初は、自分自身も仕事が忙しく、息子のことは妻に任せっぱなしでした。定年になって、息子にかかわるようになりました。息子が患っているこころの病は、外科的なものではないので、長い目でかかわるしかないと今は思っています。
グループホームに入居するきっかけ
息子の将来が心配でした。親がいなくなった後、町内会のことや家の修繕などを、病気の息子一人で行うことは難しいと感じていました。病気の波もあり、それによって親子喧嘩をすることもありました。入退院をくり返し、息子や病院職員と話し合いを重ねてグループホーム入居することになりました。息子は親から見捨てられたと感じたようで、事あるごとに「捨てられた。」と言ってきます。ですが、息子の居場所があるということは、親として安心です。
「自立してほしい」と思う親心
息子は家にいた頃から、心配なことがあると何度もくり返し同じ相談をしてきます。これはグループホームに入居してからも変わらず、よく電話がかかってきます。息子の希望で週末は家に帰ってきており、買物にも連れていっています。息子には“親がいなくなったら一人で暮らさなければならない”という覚悟がまだないように思います。親としては、グループホームに入居できたことで、「自分で買物に行ってほしい」「週末も一人で過ごせるようになってほしい」と、どんどん欲が出てきました。なかなか思うように進まないものです。
家族にしか分からない気持ちもある
息子にとって、病院やグループホーム職員といった支援者とつながり、相談できる場所が増えたのは良い事だと思います。私自身、支援者の息子への接し方を見ていて「優しい伝え方をされているな。」と参考になることもあります。参考になりますが、それぞれの家によって状況も違うので、家族にしか分からない気持ちもあると思っています。
息子との“これから”について思うこと
親がいなくなった後の生活が心配という気持ちは変わらないです。以前は私が元気なうちに、少しでも自立してほしいと思っていましたが、親がいなくなってからでないと息子は変われないのかもしれないと思うようになりました。実は、息子が病気になる前は、ほとんど話をすることがありませんでした。病気になってから、気晴らしに釣りに行ったり、話をするようになりました。よく話をする関係になれたのは、息子の病気がきっかけだったのかもしれません。1つの心配事にひっぱられて不安になる息子には、何か楽しみをもってほしいと思います。
しらぎく会へ期待すること
家族はいろんな情報を求めています。インタビュー記事を見て、他の精神障がいがある方の暮らしや仕事の様子を知り、参考になりました。これからも様々な情報が得られると嬉しいです。