地域の相談役として~民生委員の役割~
今回は、加賀市で民生委員(※1)を務めている山本 憲一さんに民生委員として活動する中でのたくさんの想いを聴かせていただきました。
民生委員として活動するきっかけや動機は?
4年前に民生委員にならないか?とお誘いがありました。民生委員については以前市役所に勤めていたので知っていました。はじめは断ろうと思っていましたが、民生委員の成り手が少ないと聞いたことから引き受けて二期目になります。
具体的にどのような活動や支援をされていますか?
子育てや介護の悩みを抱える人、障がいのある人や高齢者などのご自宅に伺って、生活についての悩みや不安などを聴き、地域の身近な相談役として生活に対する助言や援助が必要な人に対するサービスの情報提供等を行ったり、専門機関を紹介したりしています。他にも児童委員(※1)として、子どもたちの登下校の安全の確保や事件・事故を未然に防ぐために、スクールバスや通園バスのお見送りや、山中温泉の町づくり推進協議会(※2)の方々と一緒に学生の送り出しや挨拶、声掛け、見守りなどを行っています。
特に高齢者(夫婦)や障がいのある人(単身)から相談を受けることが多いです。例えば、生活保護を受けている人からは「今住んでいる家の家賃が高いので少しでも安くなる制度は無いか?」と相談を受けたり、市営住宅に住む高齢者のために冬場に家の周りの雪かきを行ったりしています。4階建てでエレベーターも無い県営住宅に住んでいる体の弱い方の日用品の買い物に代わりに行くこともありました。お米は4階まで運ぶのが大変だったので配達してもらえるように手配をしました。ある目の不自由な人からは、「今日、防災無線のテスト放送があるなんて聞いてない!」と苦情を言われることがありました。防災無線のテスト放送を行うことはチラシで通達されていましたが、目が不自由なため伝わらなかったことから、テスト放送を行う時にはその都度伝えに行っていました。以前に、車を持っていない高齢者から「買い物に行くなら私も車に乗せてほしい」と言われることがありました。その地域では、近くに買い物をできる場所が無いので仕方がないとは思いましたが、私が車に乗せて買い物に連れて行くことは民生委員の役割としては違うと思いお断りしました。その代わりに買い物の支援を行っているサービスの紹介を行いました。
民生委員の活動の中で大変だったことはありましたか?
あまり苦労したことは無いです。市役所で長年勤めていたこともあり、介護保険制度のことにも携わっていた時期もあったので、どこに何を相談すればよいのかは大体わかっています。たまに、自分の担当地区では無い方が相談に来られることがあり、他の担当地区の現状が分からない中で相談にのることはできないので困ることがあります。そういう場合はその人の担当地区の民生委員を紹介し対応していただいています。
地域の人たちとかかわっていく時に、どんなことを大切にしていますか?
自分の住んでいる地区を担当していた時は、よく知っている場所なので気軽に自宅に伺うことが出来ていたけど、いま担当している地区は自分が住んでいる地区とは違う場所なので地域の方たちとあまり繋がりが持てていないです。担当した地区で、「こうしていきたい!」という民生委員としての想いもあるけど、かかわる人たちに対して「この人好きだな、苦手だな」と区別してしまうこともあり、自分の中で深く関わることに一線を引いてしまうことがあります。もっと親しみやすく、積極的に地域の人たちに関わっていくことが今の自分の課題です。山中温泉にある「冨士見通りお茶の間さろん」(※3)という事業所のある職員さんは積極的に地域の人の相談にのっているから凄いなと思うことがあります。
民生委員としてのやりがいはどんなところにありますか?
私は市役所で働いていたので、支援に必要な制度や現在の市や県が行っている取り組みについてはある程度の知識があります。この民生委員の仕事は、自分が今までやってきた仕事をベースにして行うことができるので、非常にやりがいがあります。また、散歩がてら地域の様子を確認しに行くと、地域の人たちから声をかけられたり、かかわってみないとわからなかった地域の実情やその人の生活の課題を知ることができて、自分の住んでいる地域について改めて知ることができました。
民生委員として、これからどんなことをしていきたいですか?
民生委員の集まりなどでよく課題に上がるのは、相談や地域の見守りなど、民生委員の活動が年々行えなくなっている地域や地区があることです。理由としては、民生委員の成り手が少ないこと、民生委員が高齢化していること、民生委員の改選時期になっても後任がいないことが大きな理由です。また、民生委員としての活動を積極的に行っている人もいれば、地域に馴染めず、あまり活動ができていない民生委員も中にはいます。私は、その地域や地区ごとに特有の課題や問題があり、その地域・地区の課題はその町の中で解決していけたらいいと思っています。今は、加賀市や地域住民の積極性が足りず、地域の課題が手つかずになっていることや、住民の減少や高齢化から地域住民が集まって話し合い、情報提供を行う機会が減ったように思えます。今、地域で大事なことは、地域住民が顔を合わせて話し合いができるような地域の拠点づくり(地区会館、公民館など)や社会参加の場を提供する事だと私は思っています。今後、自分が元気なうちに、社会参加の場を広げる活動を行ったり、民生委員として活動があまりできていない地域への声掛けや制度についての助言や提案などを行っていきたいと思っています。
【※1】民生委員・児童委員
民生委員は、厚生労働大臣から委嘱され、それぞれの地域において、常に住民の立場に立って相談に応じ、必要な援助を行い、社会福祉の増進に努める方々であり、「児童委員」を兼ねています。 児童委員は、地域の子どもたちが元気に安心して暮らせるように、子どもたちを見守り、子育ての不安や妊娠中の心配ごとなどの相談・支援等を行います。(厚生労働省ホームページ参照)
【※2】山中温泉地区まちづくり推進協議会
まちづくり推進協議会とは、自分たちのまちを、自分たちの手で、住み良く活気のあるまちにするため、みんなで活動をする組織です。山中温泉地区まちづくり推進協議会は、山中温泉地区18町に住む住民で構成され、平成23年7月に設立されました。同会は、地域の防災・防犯活動や、文化・スポーツ・環境美化活動、地区広報の発行など、各種団体と協力しながら地域のコミュニケーションを図り、さまざまな活動を行っています。
【※3】冨士見通りお茶の間サロン(小規模多機能型居宅介護)
冨士見通りお茶の間サロンは、介護保険の地域密着型サービスの一つで、民家を改修した小規模な住居型の事業所です。ご本人の状況や希望に応じて、「通い」を中心に、「訪問」や「泊まり」を組み合わせて、住み慣れた自宅や地域で継続して生活していくために必要な支援を行っています。また、加賀市の山中地区高齢者こころまちセンター(地域包括支援センターブランチ)として、高齢者の皆さんやそのご家族、地域の皆さんの悩みや相談に対応する総合相談窓口としての役割も担っています。